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ジャーナル

現場で蓄積した支援データと、制度の狭間で見えてきた課題を、包み隠さず公開します。数字の背景にある現実、そして私たちの分析と提案——一次情報にもとづく記事を発信しています。

ジャーナル

野村證券「Trynibus」に現場同行型メンタルヘルス支援サービスが掲載されました

2026年7月26日

合同会社上進は、野村證券株式会社が運営する事業推進支援プラットフォーム「Trynibus(トリニバス)」に掲載されました。現場同行型メンタルヘルス支援サービスおよびITサービスが評価されたものです。

掲載の経緯

このたび当社は、野村證券株式会社が運営する事業推進支援プラットフォーム野村證券『Trynibus』サービス紹介ページ(野村證券公式)に掲載されました。当社の現場同行型メンタルヘルス支援サービス、および企業の業務効率化を支えるITサービスが、中堅・中小企業の経営課題の解決に資するものとして評価されたものです。

Trynibus(トリニバス)とは

Trynibusは、野村證券株式会社が運営する中堅・中小企業向けの事業推進支援プラットフォームです。経営の4大リソースである「ヒト」「モノ・サービス」「カネ」「情報」に紐づく課題に対し、各分野の専門企業のサービスを紹介することで、企業の持続的な成長を支援します。利用は野村證券担当者経由の申込制であり、所定の審査を経て提供されます。なお、本サービスは有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。

掲載の意義と今後の姿勢

金融機関の事業支援プラットフォームにメンタルヘルス支援サービスが掲載されることは、企業経営における「ひとの健康」の重要性が、財務戦略と同列の経営資源として認識されつつあることの表れと受け止めています。

当社は今後も、社会的孤立や精神疾患により困難を抱える方々への現場同行型支援と、テクノロジーを活用した業務効率化の両面から、中堅・中小企業の持続可能な経営と、そこで働く人々の健康に貢献してまいります。

「寛解率81.25%」は何を意味するのか ― 現場同行型支援の記録

私たちが支援した32名のうち、26名(81.25%)が寛解・社会復帰に至りました。この数字はどう測られ、何を語り、そして何を語らないのか。科学的な限界まで含めて開示します。

現場同行型支援とは

私たちが大切にしてきたのは、面談室で話を聞くことではなく、役所の窓口・警察署・医療機関・職場など、困りごとが実際に起きている現場へ同行し、隣にいることです。正しい知識で本人を適切な制度(生活保護、障害年金、労災保険、傷病手当金など)に結びつけ、窓口や職場との折衝では本人の権利主張を支えます。

痛感したのは、救済制度は数多くあるのに、困窮者への認知度が極めて低いという問題です。制度を知り得ても、誤情報や偏見がネット上に溢れているため利用を自ら拒むケースがあり、窓口の案内が不適切で制度につながらない例、各窓口が自分の担当制度しか把握せず横断的に案内できない「縦割り」の弊害もあります。これは職員個人の責任ではありません。日々の対応に追われ、他制度を学ぶ余裕がないのが実情で、人員不足は深刻です。

「81.25%」の測り方

恣意的な操作を避けるため、集計期間・目標値・判定基準・除外基準はすべて事前に設定しました。

集計期間:2023年4月〜2024年9月(18か月/約8割が18か月以内に社会復帰の可否が判明するという観察に基づく)

対象:32名 / 結果:26名が寛解(81.25%) / 事前目標:66%

判定基準:通院中の方は主治医の寛解・就労可能判断、通院を望まない方は長期的な体調観察・本人の意思・当社評価に基づく

除外:集計終了時点で可否を判断できなかった方は除外

薬だけでは解決しない ― STAR*D研究との比較

米国国立精神衛生研究所(NIMH)が資金提供した大規模試験STAR*D(解析対象2,876名)では、抗うつ薬単剤治療の寛解率は評価尺度により27〜33%にとどまりました。私たちの初期寛解率81.25%は、その2倍を超える水準です。ただし私たちは再発を追跡できておらず、単純比較はできません。この差が示すのは、薬で症状を抑えるだけでは、生活・仕事・人間関係の根本課題は解決しないということです。骨折した人に湿布を出すだけの対症療法に終わらせない ― それが現場同行の狙いです。

私たちの視点 ― 限界の開示と第三者検証のお願い

科学的誠実性のため限界を明記します。①対照群のない単一群の観察であり無作為化比較試験ではない、②対象32名と小規模で重症度・診断構成もSTAR*Dと異なる(あくまで参考値)、③再発率は未追跡、④判定に主治医判断と自社評価が混在。これらを認識したうえで、大学・研究機関との共同研究による第三者検証を強く希望しています。

出典

Trivedi MH, et al. Am J Psychiatry 2006;163(1):28-40 / Rush AJ, et al. Am J Psychiatry 2006;163(11):1905-1917

【生活実態】6割が「苦しい」と答える国 ― 実質賃金はなぜ上がらないのか

株価も企業収益も好調と報じられるのに、なぜ家計は楽にならないのか。国民の約6割が生活を「苦しい」と感じる国の、統計に表れた実像です。

現状

厚生労働省「2024(令和6)年国民生活基礎調査」によれば、生活意識が「苦しい」と答えた世帯は58.9%。児童のいる世帯では64.3%、2022年の大規模調査では母子世帯の75.2%にのぼります。1世帯当たり平均所得は536万円で、ピークの1994年(664万2千円)を大きく下回ったままです。

賃金面では、2025年の名目賃金(現金給与総額)は前年比2.3%増でしたが、物価上昇に追いつかず、実質賃金は前年比マイナス1.3%と4年連続のマイナス。2014年以降の12年間で実質賃金がプラスだったのはわずか3回です。

問題点

物価上昇は食料品など生活必需品に集中し、低所得層ほど負担が重い「逆進的なインフレ」の性格を持ちます。賃上げの恩恵は大企業・正規雇用に偏り、中小企業労働者・非正規・年金生活者には十分届いていません。

解決策

第一に、最低賃金引上げと一体で、中小企業の価格転嫁を実効的に保障する下請法・独占禁止法の運用強化。第二に、生活必需品の負担軽減(消費税の軽減税率の再設計を含む検討)。第三に、生活保護基準・障害年金等を物価に確実に連動させる仕組みの明確化。ただし価格転嫁の強制は形骸化しやすく、監督行政(公正取引委員会・労働基準監督機関)の人員拡充が前提です。

私たちの視点

「賃金と物価の好循環」という目標は、実質賃金が4年連続で低下している現実の前では未達です。マクロ指標ではなく、生活意識調査の「苦しい」の割合を政策評価指標(KPI)に据えるべきだと考えます。

出典

厚生労働省「2024年国民生活基礎調査の概況」(2025年7月4日公表)、同「2022年」、「毎月勤労統計調査 2025年分結果確報」(2026年2月公表)

【年金】「自助」に置き換えられた老後 ― 世代間格差と年金の現実

終身雇用と高金利で資産を築けた世代と、非正規と低金利のなかで「自助」を求められる現役世代。年金制度に刻まれた世代間の非対称を見ていきます。

現状

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金(第1号)老齢年金受給者の平均月額は、老齢基礎年金を含めて約15万円。国民年金のみの受給者は月6万円弱です。持ち家がなく都市部で家賃を払えば、残る生活費は生活保護の生活扶助基準と大差ありません。

現在の高齢世代の多くは終身雇用・高金利預金・退職金で資産形成できた時代を生きました。一方、現役世代は雇用の非正規化(役員を除く雇用者の約4割が非正規)と低金利のもとに置かれ、国はNISA・iDeCoで老後資産形成を個人の自助に委ねています。しかし投資に回す余裕のない世帯に、恩恵は届きません。

問題点

賦課方式の年金は現役世代の縮小で給付水準の低下(マクロ経済スライド)が織り込まれ、若年層の所得代替率はさらに下がる見通しです。「自助」を求める政策は、備えられる層と備えられない層の格差を老後に持ち越し、将来の生活保護受給世帯を大量に生む構造的リスクをはらみます。

解決策

第一に、基礎年金の給付水準の底上げ(厚生年金積立金の活用を含む再設計は2025年の年金改革でも論点に)。第二に、低所得高齢者向けの住宅手当(家賃補助)の創設 ― 持ち家の有無が老後を決定づける現状に、住宅保障は年金改革と同等に重要です。第三に、年金見込額の「見える化」教育の充実。

なお「財源は?」とよく問われますが、財源は税収です。現在の税収は歴史的高水準にあり、乏しくはありません。問題は、効果の乏しい支援・組織への支出や配分の偏りです。国民が納めた税金の使途は、誰もが容易にアクセスでき理解できる形で開示されるべきです ― それは大学のサークルやOB・OG会でも当たり前に行われていることです。

私たちの視点

「老後2,000万円問題」以降、年金不信は臨界点にあります。制度を維持するためにこそ、都合の悪い将来見通しも含めた誠実な情報開示と、住宅・医療を含む総合的な生活保障の再設計が必要です。

出典

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」、総務省「労働力調査」、金融庁「NISA制度」各種資料

【労働】働いても報われない ― 労働と生活保護の逆転現象

フルタイムで働いても、手取りが生活保護と変わらない。この「逆転」が、受給者への攻撃と分断を生んでいます。本当の問題はどこにあるのか。

現状

国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によれば、給与所得者の平均給与は年478万円。ただし非正規雇用者に限れば平均200万円前後です。単身・都市部では、手取り月収が生活保護(生活扶助+住宅扶助)を下回る、あるいは僅かに上回る程度の労働者が相当数存在します。生活保護では医療費等の実費負担がないことを考えれば、「働いても働かなくても生活水準が変わらない」逆転が現実に生じ得ます。障害者雇用の求人賃金も多くが最低賃金近傍で、同じ構造です。

この帰結として、労働者の不満は制度ではなく受給者個人へ向かい、「現物支給にせよ」といった尊厳を否定する言説がSNSに溢れます。私たちの現場でも、偏見を恐れて申請をためらい困窮を深める事例を繰り返し見てきました。

問題点

本質は、生活保護が高すぎるのではなく、労働の対価が低すぎることです。憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」とフルタイム労働の対価がほぼ同じなら、それは最低賃金と労働分配の失敗を意味します。人手不足を賃上げでなく安価な労働力で埋める企業行動が広がれば、賃金はさらに下押しされます。技能実習制度が育成就労制度へ改められた経緯は、安価な労働力への依存が持続不可能であることを示しています。

解決策

第一に、最低賃金の中期引上げ目標(政府は全国加重平均1,500円を掲げる)と中小企業支援の一体実施。第二に、スティグマ解消の行政広報と、捕捉率(受給資格者のうち実際に受給する人の割合)の調査・公表。第三に、働くほど手取りが確実に増える給付付き税額控除の検討。急激な引上げは地方の中小企業と衝突するため、価格転嫁・生産性向上・社会保険料軽減をパッケージで講じる必要があります。

私たちの視点

受給者への攻撃は、本来「低すぎる賃金」に向くべき怒りが弱い立場の者へ転嫁された姿です。分断を煽るのではなく、労働の対価を引き上げることでしか、この対立は解消されません。

出典

国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」、厚生労働省「生活保護制度」生活扶助・住宅扶助基準、出入国管理及び難民認定法等改正法(令和6年法律第60号)

【雇用の質】初任給30万円の影で ― ブラック企業の手口と非正規の不安

華やかな初任給引上げの裏で進む「賃金の逆転」と選別的な退職誘導。そして翌年には契約を切られるかもしれない非正規の若者たち。雇用の質の劣化を追います。

現状

人材獲得競争を背景に新卒初任給を30万円以上に引き上げる企業が相次いでいます。しかしこれは全社員の賃金カーブが底上げされたことを意味せず、新卒の給与が教育担当の先輩を上回る「賃金の逆転」が生じている企業もあると報じられています。

高賃金で採用した人材を「能力に見合わない」として退職勧奨や自己都合退職へ誘導する巧妙な運用、恣意的な評価による不利益変更、雇止めといった手法を、私たちの現場でも繰り返し確認しています。労働問題NPO「POSSE」代表の今野晴貴氏は『ブラック企業2 「虐待型管理」の真実』(文春新書、2015年)で、戦略的な選別と使い潰し、被害者自身が「自分が悪い」と思い込まされる心理的支配の構造を多数の相談事例から明らかにしています。「被害者が自責する」という共通点は、私たちの支援事例とも一致します。

さらに、契約社員・パート・派遣など非正規雇用が大きく拡大しました。収入は生活の可否を分ける水準で、翌年には契約を打ち切られる不安を抱え続けます。こうした状況で結婚・出産を望むのは容易ではありません。もがいた末に行き着く先が生活保護となりかねず、必死に耐えてきた人が追いやられる構造は、国民の尊厳を損なうものです。

問題点

サービス残業・退職勧奨・雇止めが「当たり前」に行われる環境は、労働基準法・労働契約法が現場で執行されていないことを意味します。労働基準監督官は事業場数に対して慢性的に不足し、摘発は氷山の一角。執行力が伴わなければ「守った企業が損をする」逆選択が起きます。

解決策(1)労働ルールを「守られる」ものにする

社労士や労働安全コンサルタントを「街の労働ルールの番人」に位置づけます。企業の社労士契約を実質的に標準化し(小規模事業者は補助金で支援)、事業所を調査する権限を与える。良い会社は認定して評価し、軽微・過失的な違反には改善の機会を、悪質な違反にのみ労基署が厳しく介入する段階的な仕組みで、監督官の負担を抑えつつ自浄作用を働かせます。仲間に社会保険労務士がいるため、制度設計を実務に即して詰められます。

解決策(2)ワークセーフトレード/ワークセーフ認証

フェアトレードの発想を労働に応用します。健全な職場と認められた事業者に「ワークセーフ認証」を与え、認証企業との取引が税制面で有利になるようにする。インボイス制度と同じ原理で、企業が自発的に認証を取りに行き、働く環境を自ら良くしていく流れを生みます。既存の認定制度(ユースエール認定・くるみん認定等)との接続も検討が必要です。

私たちの視点

「初任給30万円」の華やかな見出しの裏で賃金体系の歪みと選別的な退職誘導が進むなら、それは社会全体の歪みの縮図です。賃上げは新卒獲得の広告ではなく、全世代の労働の対価として行われるべきです。

出典

今野晴貴『ブラック企業2 「虐待型管理」の真実』文藝春秋(文春新書)、2015年

【労働組合】権利を主張できない国 ― 労働組合はなぜ機能しないのか

組織率は過去最低の16.0%。最も保護を必要とする人ほど組合の外にいます。声を上げにくい国民性はどこから来たのか。

現状

厚生労働省「令和7(2025)年労働組合基礎調査」によれば、推定組織率は16.0%と過去最低。従業員1,000人以上の企業では38.7%である一方、99人以下ではわずか0.7%、パートタイム労働者は8.8%です。最も保護を必要とする中小企業労働者・非正規労働者ほど、組合の外に置かれています。日本の組合の大半は企業別組合で、欧州で一般的な産業別労働組合と異なり、交渉力が個別企業の労使関係に閉じ込められています。

問題点

企業別組合は企業の存続と組合員の利益が一体化しやすく、企業横断的な賃金相場の形成や未組織労働者への波及が働きにくい構造です。学校教育では「右へ倣え」が重んじられ、集団からはみ出さないこと、目上に従うことが求められてきました。その結果、理不尽を黙って受け入れ不満を飲み込む国民性が形成された ― これは増税や制度変更に声を上げにくい国民性、企業にとって扱いやすい労働者を生み、搾取されやすい構図につながったと私たちは考えます。ストライキやデモを「異端」「過激」と感じるよう社会化された結果、違法な働かせ方にも「黙って飲む」ことが常態化し、賃金停滞と労働環境悪化の温床となっています。

解決策

第一に、産業別・職種別の横断的な相場形成を促す仕組み(労働協約の地域的拡張適用制度=労働組合法18条の活用促進)。第二に、企業の枠を超えて個人加盟できるユニオン・合同労組への公的支援と周知。第三に、学校教育段階からの労働法教育(ワークルール教育)の必修化。権利を知らなければ、行使することもできません。

私たちの視点

賃上げを政府が経済界に「お願い」する現状は、本来労使交渉が果たすべき機能の空洞化を示しています。交渉力の再建こそが、持続的な賃上げの唯一の土台です。

出典

厚生労働省「令和7(2025)年労働組合基礎調査の概況」(2025年12月公表)

【少子化】想定より15年早い危機 ― 少子化対策はなぜ効かないのか

出生率1.14、東京都は0.96。国立社会保障・人口問題研究所が2040年と見込んだ水準に、15年前倒しで到達しました。7兆円を投じても止まらないのはなぜか。

現状

厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)」によれば、2025年の出生数は67万1,236人と10年連続で過去最少を更新、合計特殊出生率は1.14と過去最低。東京都は0.96と初めて1.0を割りました。国立社会保障・人口問題研究所の中位推計(2023年)は出生数67万人への到達を2040年と見込んでいましたが、現実は15年前倒しです。自然減は91万8千人に達しました。児童のいる世帯は全世帯の16.6%と過去最少、単独世帯は34.6%と過去最高です。一方、こども家庭庁の2025年度予算は約7.3兆円と大幅拡大しましたが、歯止めはかかっていません。

問題点

主因は「子育て支援の不足」だけでなく、その手前の「結婚・出産を選べない経済状況」にあります。非正規・低賃金・不安定雇用の若者は結婚率が顕著に低く、困窮していなくても「自分が親になれる自信がない」という声を現場で多く聞きます。背景には雇用と収入の不安定さ、長時間労働、将来不安がある。児童手当拡充など「産まれた後」に予算が偏り、「産む前」の雇用・所得の安定という根本原因への投資が不足していることが、予算規模と成果の乖離を生んでいます。

解決策

第一に、少子化対策の重心を「子育て支援」から「若年層の雇用・所得の安定化」へ拡張(非正規の正規化支援、若年層向け住宅支援)。第二に、こども家庭庁予算の効果検証(EBPM)の徹底と、効果の乏しい施策から効果の高い施策(保育の充実等)への再配分。第三に、長時間労働の是正と男性育休の実質化。雇用・住宅は複数省庁にまたがるため、省庁横断の司令塔機能が必要です。

私たちの視点

予算総額の大きさは本気度を示しません。出生数という結果に対して責任の所在を明確にし、実態に合った施策へ組み替える勇気が問われています。

出典

厚生労働省「令和7年人口動態統計月報年計(概数)の概況」(2026年6月3日公表)、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」、こども家庭庁 令和7年度予算関係資料

【税・負担】「静かな増税」と過去最高の税収 ― 負担はどこへ消えるのか

税収は6年連続で過去最高。それでも6割が「苦しい」と答える。国会の議論を経ずに積み上がる「静かな負担」の正体を見ていきます。

現状

財務省によれば、2025年度の一般会計税収は84兆2,226億円と6年連続で過去最高を更新し、前年度から約9兆円増。消費税は26兆278億円と過去最高です。物価高で消費額が膨らんだことが税収を押し上げ、国民の負担増がそのまま税収増に反映された形です。

税以外にも負担は静かに積み上がっています。再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)は、太陽光発電等の固定価格買取費用を全電気利用者が負担する仕組みで、2025年度3.98円/kWh、2026年度4.18円/kWhと過去最高を更新し、標準的家庭で年間約1万5千円の負担に。2024年度からは森林環境税(1人年額1,000円)が個人住民税に併せて課され、医療保険料には後期高齢者支援金が組み込まれ、現役世代の保険料の相当部分が高齢者医療の支えに充てられています。

問題点

これらは国会での十分な議論や国民的合意を経ずに、保険料・賦課金という形で実質的に積み増されます。取りやすいところから静かに取る手法は、負担と受益の関係を不透明にし、政治不信を増幅させます。太陽光発電はパネル製造・廃棄時の環境負荷、景観・防災上の問題も各地で顕在化しており、賦課金による大量導入の妥当性そのものを検証すべき段階です。

解決策

第一に、税・保険料・賦課金を合算した「実質国民負担率」の世帯類型別の見える化と、新賦課金創設時の国会報告の義務化。第二に、再エネ賦課金制度の総括的検証と、ペロブスカイト太陽電池・核融合など次世代技術への研究開発投資への重点移行。第三に、過去最高の税収を、国債償還・防衛費だけでなく生活者支援の恒久財源として明確に位置づけること。

私たちの視点

税収が過去最高を更新し続ける一方で、国民の6割が生活を「苦しい」と感じている ― この対比こそが、分配のあり方を問い直すべき最大の根拠です。年金が生活保護水準を下回る生活を強いるのであれば、憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しているとはいえず、私たちは憲法違反・人権侵害にあたると考えます。

出典

財務省「令和7年度一般会計決算概要」(2026年7月3日公表)、経済産業省 再エネ賦課金単価告示(2025年3月・2026年3月)、総務省・林野庁「森林環境税及び森林環境譲与税」、厚生労働省「後期高齢者医療制度」関係資料

【食料安全保障】有事に飢える国 ― 食料自給率38%が問うもの

カロリーベースの食料自給率は38%。輸入の約7割を3か国に依存し、担い手の平均年齢は69.2歳。名産地でさえ国産が消えていく現実を、伊豆の金目鯛から考えます。

現状

農林水産省によれば、2024(令和6)年度の食料自給率はカロリーベースで38%と4年連続横ばい。改正食料・農業・農村基本計画は2030年度までに45%への引上げを掲げていますが、道のりは遠いのが実情です。輸入の約7割を米国・豪州・カナダの3か国に依存しており、有事の脆弱性は明白です。

担い手も急速に細っています。農水省「令和6年版 食料・農業・農村白書」によれば、2024年の基幹的農業従事者は111万4千人、うち70歳以上が60.9%、平均年齢は69.2歳です。現場では、国から農家への補助金が年々削減されているという専従者の切実な訴えを、私たち自身が聞き取ってきました。

私自身、伊豆で金目鯛の煮付けで評判の定食屋を訪れた際、「これは外国産なのよ」と告げられ衝撃を受けました。複数の土産物店で真空パックの金目鯛を手に取ると、その裏面はいずれも外国産。名産地でさえ、国産の一次産品が食卓から遠ざかりつつあります。

若者を農業に呼び込む施策も実効性を欠きます。国は新規就農者向けに「経営開始資金」として、経営開始から最長3年間・年間150万円(月12.5万円)を交付していますが、この水準は単身世帯の生活保護基準と大きく変わらず、施策の本気度に強い疑問を抱きました。

問題点

安価な食料を大量に仕入れ、国内の一次産業を価格競争で駆逐すれば、安全で新鮮な国産品はいっそう高価になり、可処分所得の乏しい消費者は外国産を選ばざるを得なくなります。農業専業者は、何の保証もない過酷な労働に従事し、天候や鳥獣被害で作物が一夜で全滅することもある。市場では安く買い叩かれ、傷や形が悪ければ大量廃棄。これを目の当たりにして農業を志す若者が僅かなのは当然です。加えて、少子化への実効策が乏しいまま外国人労働者の受け入れが急速に進むことは、賃金上昇の機会を奪い、日本独自の伝統・文化・品質・もてなしの心を損なう一因ともなり得ます。

解決策

第一に、農業・漁業・畜産・養鶏など一次産業への本格的支援(所得補償の拡充、価格下落・災害・鳥獣被害へのセーフティネット強化、担い手への交付水準の抜本的引上げ)。第二に、学校給食・公共調達での国産優先の徹底と、国産を選びやすくする表示・流通の整備。第三に、飼料・種子・肥料など生産基盤の国産化への投資。国内需要が高まれば生産効率も向上し、価格は徐々に下がり、雇用が増え、担い手が増え、後継者問題の緩和にもつながります。

私たちの視点

食料とエネルギーを過度に海外に依存する国は、有事にきわめて脆弱です。食料自給率の低さは自然現象ではなく政策的選択の結果。国内の一次産業を守ることは、単なる産業政策ではなく、国民の生存と尊厳、そして文化を守る安全保障そのものです。

出典

農林水産省「令和6年度食料自給率」(2025年10月10日公表)、同「令和6年版 食料・農業・農村白書」、同「新規就農者育成総合対策(経営開始資金)」、改正食料・農業・農村基本計画(2025年4月11日閣議決定)

【地域経済】シャッター街と一極集中 ― 効率化は誰のためか

大型モールの進出、セルフレジ化、赤字路線の廃止。効率化の便益は資本側に集中し、費用と孤立は生活者に転嫁されていないか。「便利さ」の定義を問い直します。

現状

大型商業施設の郊外進出により、各地の商店街は「シャッター街」と化し、八百屋・肉屋などの個人商店は顧客を奪われてきました。中小企業庁の商店街実態調査では、「衰退している」「衰退の恐れがある」との回答が長年多数を占めます。地方の鉄道では利用者減により赤字路線の廃止・第三セクター化・バス転換が進行。人口は東京圏への転入超過が続き、東京都の出生率は0.96と全国最低なのに人口は集中し続けるという矛盾が固定化しています。

問題点

巨大商業施設は移動距離が長く、高齢者や足の不自由な方には使いづらい。個人商店が担っていた対面の交流・食の安全・見守り機能 ― 独居高齢者の異変に店主が気づくといった「目に見えない安全網」― が、効率化・省人化・外国人材の導入のなかで失われつつあります。水のセルフサービス化や注文のタッチパネル化も進み、人と人のぬくもりある接点が減っています。すべての外国人が問題なのではありませんが、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」といった接客文化になじまない対応に接することがあるのも事実です。地域交通の縮小は通院・買い物の足を奪い、過疎化を加速させる悪循環を生んでいます。

解決策

第一に、まちづくり三法(都市計画法・中心市街地活性化法・大規模小売店舗立地法)の実効性の再検証と、生活圏内で徒歩で用が足りる「コンパクトシティ+歩いて暮らせる商店街」への政策誘導。第二に、地域公共交通の維持を「事業採算」ではなく「地域の生存基盤」として位置づけ、再構築への国費支援を拡充。第三に、個人商店の事業承継・デジタル化支援。大型店は集客力が強く、誘致した自治体は税収増の恩恵を受けるため、流れを止めるのは容易ではありません。

私たちの視点

効率化そのものは歓迎すべきですが、便益が資本側に集中し、費用負担・交流の喪失・移動困難が生活者に転嫁されるなら、それは進歩ではありません。「便利さ」の定義を、車を運転できる現役世代の目線から、地域で暮らす全ての生活者の目線へ引き戻す必要があります。

出典

中小企業庁「商店街実態調査」、国土交通省「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する検討会 提言」(2022年)、総務省「住民基本台帳人口移動報告」

【政治参加】若者の声が届かない選挙 ― シルバーデモクラシーを超えて

20代の投票率36.5%に対し、60代は71.4%。「投票率×人口」の両面で、若者の政治的影響力は構造的に小さくなっています。自己責任論で終わらせないために。

現状

総務省の調査によれば、国政選挙の投票率は一貫して高齢層が高く若年層が低い。令和3年衆院選では20歳代36.50%に対し60歳代71.38%でした。少子高齢化で有権者数自体も高齢層に偏り、若年層の政治的影響力は構造的に小さくなっています。

問題点

政治学で「シルバーデモクラシー」と呼ばれるこの構造では、候補者ほど高齢層向け政策を優先する合理性を持ち、若者・子育て世代向けは後回しにされがちです。教育・雇用・住宅など将来世代への投資が政治的に選択されにくいことは、少子化・世代間格差の固定化に直結します。議員定数削減は一見「身を切る改革」に見えますが、比例定数の削減は少数意見・新人・無所属の当選可能性を狭め、多様な民意の反映をかえって損なう恐れがあると政治学者から繰り返し指摘されています。

解決策

第一に、被選挙権年齢の引下げと供託金の見直しによる若年層の立候補障壁の緩和。第二に、主権者教育の充実と投票環境の整備(共通投票所・ネット投票の技術的検証)。第三に、こども・若者の意見を政策形成に反映する仕組み(こども基本法11条の意見反映措置)の実質化。世代間の一票の重みを調整する「世代別選挙区」等の構想も学術的に提案されていますが、憲法14条の平等原則との整理が必要な論点であり、まずは投票参加の底上げと意見反映制度の充実から着手すべきです。

私たちの視点

「若者が投票に行かないのが悪い」という自己責任論で終わらせず、参加したくなる制度・参加が結果に結びつく制度への改革を、政治の側の責任として求めます。

出典

総務省「国政選挙における年代別投票率について」、こども基本法

【精神医療】「5分診療」を生む診療報酬 ― こころの医療の構造問題

時間をかけて患者と向き合うほど、医療機関の収益は悪化する。「5分診療」は医師個人の姿勢の問題ではなく、報酬設計の問題です。診療報酬点数から構造を読み解きます。

現状

2025年の自殺者数は1万9,188人と、統計開始以来初めて2万人を下回りました。長期的な減少は官民の対策の成果ですが、日本の自殺死亡率は国際的になお高く、10〜39歳の死因第1位は自殺です。精神疾患を有する総患者数は約614.8万人(令和2年患者調査)、ひきこもり状態にある人は15〜64歳で推計146万人(内閣府 令和4年度調査)にのぼります。

一方、精神医療の側には診療報酬に由来する構造的制約があります。外来の中心である「通院・在宅精神療法」(I002)は、再診では診療時間が5分を超えれば算定でき、30分以上との点数差は限定的。このため多くの外来では数分間で症状のヒアリングと処方調整を行う診療が経営上の合理的解となり、生活や心の課題に時間をかける診療は、行うほど収益が悪化します。

有効性が確立している認知行動療法(CBT)は、医師が30分超で実施した場合480点(4,800円)、一連16回が上限(I003-2)。採算が合わず、保険診療でCBTを提供する医療機関は極めて限られます。発達障害の特性理解に有効なWAIS-IV等の心理検査も、「操作と処理が極めて複雑」区分で450点(4,500円)にとどまり、専門職を検査・採点・分析に長時間拘束すると採算が合いません。

問題点

第一に、報酬構造が「短時間・投薬中心」の外来運営を事実上強いており、心理療法や心理検査が保険診療で成立しにくいこと。薬物療法単独の初回寛解率は27〜33%にとどまり(STAR*D)、症状を薬で抑えるだけでは根本課題が残ります。第二に、既存の相談支援の多くは「窓口で待つ」形式で、最も支援を必要とする人ほど窓口にたどり着けない。自殺総合対策大綱が明記するとおり「自殺は、その多くが追い込まれた末の死」であり、雇用・所得・地域の各問題は、最終的に個人のこころの危機として現場に現れます。

解決策

第一に、診療報酬上の評価の見直し ― CBTの点数引上げと算定要件の緩和(公認心理師が実施する場合の評価の本格導入)、心理検査の点数を実際の人件費・所要時間に見合う水準へ、診療時間に応じた精神療法の評価の傾斜強化。第二に、医療の外側の伴走支援の制度化 ― 私たちの「現場同行型支援」は窓口にたどり着けない人と制度・医療をつなぐアウトリーチの一形態であり、重層的支援体制整備事業(社会福祉法106条の4)に民間の伴走型支援を明確に位置づけることを提案します。

私たちの視点

現在の構造は、例えるなら骨折した人に湿布だけを処方し続ける仕組みです。「窓口で待つ支援」から「出向く支援」へ、「症状を抑える医療」から「根本的な要因を解きほぐし、回復を支える医療」へ、制度と予算の重心を移すべき時です。

出典

厚生労働省・警察庁「令和7年中における自殺の状況」、厚生労働省「令和2年患者調査」、内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」、厚生労働省「診療報酬点数表」I002・I003-2・D283・D285

【介護】介護は人が担うべきである ― 技術の時代に問う「ぬくもり」

2040年度に必要な介護職員は約272万人。人手不足を外国人材で補う流れが進むなか、私たちは「介護の中核は人間が担うべきだ」と考えます。技術が果たすべき役割とは何か。

現状

どれほどAIやロボット技術が発展しても、介護の中核は人間が担わなければならないと私たちは考えます。背景には深刻な人材不足があります。厚生労働省の推計では、2040(令和22)年度に必要となる介護職員は約272万人。2022年度の約215万人から約57万人の増員が必要で、外国人材の受け入れはこの不足を補うための政策的選択として進められてきた側面が強いといえます。

代表はこれまで、入院の経験に加え、ボランティアとしてデイサービス・介護施設・特別養護老人ホームなどの現場に幾度も足を運んできました。そこで目にしたのは、入所者が社会から切り離されていく現実です。家族の面会も限られ外出もままならない環境で、社会とつながる唯一の接点が、介護者との日々の会話であることも少なくありません。

問題点

その接点がロボットに置き換わったとき、人が本当に必要とするぬくもりは失われます。「あの時こんなことがあったね」と過去を分かち合い、共感を交わしながら安心して余生を送りたい ― それは多くの人にとって、ごく自然な願いではないでしょうか。介護は単なる身体介助ではなく、尊厳と情緒的な支えを含む営みです。

外国人労働者の受け入れが急速に進む現状にも懸念があります。これは特定の国や個人を非難する趣旨では決してありません。言語・文化・生活環境・社会制度が根本的に異なる以上、「あの時あんなことがあったね」という共感を十分に成立させることは容易ではなく、それが埋めがたいのは誰の責任でもありません。

だからこそ問われるべきは、外国人労働者個人ではなく、国内の介護職がなぜ人手不足に陥っているのかという点です。厚生労働省の集計では、2025(令和7)年の介護職員の平均給与(賞与込み)は月31.4万円で、全産業平均の39.6万円を約8.2万円下回っています。負担の重さに待遇が見合っていません。

解決策

第一に、介護職の処遇改善を加算方式の積み増しにとどめず、全産業平均との賃金格差を計画的に解消する水準まで引き上げること。第二に、技術は「人の代わりに温かみを提供する」のではなく、介護者の身体的負担を軽減し、人と人が向き合う時間を生み出すために活かすこと ― ロボットが記録や移乗の補助を担い、人が対話と情緒的な支えに専念できる役割分担こそ、技術発展の時代にふさわしい介護のあり方です。第三に、外国人材については受け入れ環境(日本語・生活支援・キャリア形成)を整えたうえで、国内人材の処遇改善と一体で進めること。

私たちの視点

技術の進歩は、人間を豊かにし幸せにするために使われなければなりません。介護において技術が果たすべき役割は、人の温もりを代替することではなく、人が人と向き合う時間を取り戻すことです。その担い手が誇りを持てる待遇を保障することは、超高齢社会を生きる私たち全員の尊厳に関わる問題です。

出典

厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月12日公表)、同「賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金について」(令和7年/2026年4月公表)

プレスリリース

上記は配信当時(2024年8月)の情報です。時間の経過に伴い、現在の事業内容・料金・数値等と異なっている場合や、記載内容の一部がすでに変更・削除されている場合があります。最新の情報は本サイトの各ページをご確認ください。

取材実績

NHK
テレビ東京
TBS
朝日新聞
共同通信
産経新聞
日経ホームビルダー
VICE News(米国)
Los Angeles Times(米国)
厚生労働省記者クラブ

これらの取材は、法人設立以前、代表・松原丈が個人の支援者として活動していた時期に対応したものです。当時は、支援の性質上、活動を快く思わない立場からの強い批判を避けるため、代表は個人名を伏せて取材に応じていました。そのため、現在これらの記事・番組を検索しても表示されない場合があります。取材当時の記録(名刺等)は当社で保管しており、報道関係者の方には確認資料をご提示できます。